Wi-fi 6とこれまでの無線LANの規格

先日(とは言っても9月の話ですが)、総務省Wi-fi 6Eに関する6GHz帯の使用を認可し、それに伴い対応Access Point(AP)の技適が開始になったというニュースがありました。

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そして、その次の世代のWi-Fi規格であるWi-Fi 7についても話がでてきていますので、これまでの無線LANの規格について少しまとめておきたいと思います。

 

IEEE vs Wi-Fi Alliance

これまでも無線LANのことを一般的にWi-fi(ワイ・ファイ)と呼ばれていましたが、我々Network技術者にとってはIEEE802.11acとかそういったキーワードの方が重要視されていました。
過去にもIEEE802.11ac対応APとかそういった難しいキーワードでメルコとか一般コンシューマー向けメーカーのHPにも記載があったかと思います。
このIEEE802.11acというのは無線LANの規格名であって、ほとんどの一般ユーザーにとっては何だか分からない難しい名前にしかなっていませんでした。
このIEEEというのはInstitute of Electrical and Electronics Engineersの略で日本語ではアメリカ電気電子学会という意味になります。
無線LANに限らずInternetやそれに伴う技術・規格を作成している団体といった感じでしょうか。
このIEEEで規定された規格ですが、解釈によって若干の実装の違いというのはこれまでも多く発生しており、それが所謂"相性"として語られてきました。
それを、各メーカーの垣根を越えてどう歩み寄りながら接続性を担保していくのか?が課題となっていたのですが、無線LANに関してはより様々なメーカーが製品を販売しており、またクライアント(無線チップ)とAccess Pointが異なるメーカー間で接続されるというのは日常的なこととなりました。
そこで、相性問題が出てしまってはいけないということで、Wi-fi Allianceが設立され無線LANの接続性の担保をWi-fiの名の下に行うということになりました。
ですので、現在ではWi-fiに対応した製品ということでAmazon等で深く考えなくても利用ができるようになっているということですね。
しかし、そうはいってもIEEE802.11ac等規格というものは存在し、それを説明するために「IEEE802.11ac対応Wi-fi AP」みたいな面倒な説明になってしまっていたのです。
だったら、よく分からないIEEEの説明は無しにしてWi-fi AllianceはそれぞれナンバリングにしてWifi 6等、急に6から始まる数字を出してきたのです。

 

IEEE802.11b(Wi-fi 2)

このIEEE802.11bが事実上の無線LAN規格の始まりと言っても良いと思います。
実際にはIEEE802.11が存在し、その第二世代ということで規格されました。
ですので、ここではWi-fi 2という位置付けになっていますが、Wi-fi Allianceではこの第二世代に関してはナンバリングしていません。もうすでに過去の規格なのでその必要性がないのでしょう

  • 規格策定時期:1999年
  • 周波数帯:2.4GHz
  • 最大速度:11Mbps
  • チャンネル幅:22MHz

IEEE802.11a(Wi-fi 2)

IEEE802.11bと同じく第二世代として5GHz(11bは2.4GHz)を利用する規格として策定されました。2.4GHz帯は電子レンジやBluetooth、DECT等様々なデバイスにて使われているものですのでかなりノイジーな周波数帯域でした。一方で802.11aは5GHzということで比較的綺麗な周波数帯域となりますので今後の主流電波帯域になってきます。

  • 規格策定時期:1999年
  • 周波数帯:5GHz
  • 最大速度:54Mbps
  • チャンネル幅:20MHz

このIEEE802.11aは当初は日本においてはGlobalと異なる周波数帯(J52:厳密には少しズレていた)を利用していたので、海外のクライアントを日本で使うということができませんでした(クライアントの技適問題もあるのですがそれはさておき)。
後に国際標準と同じ周波数帯(W52)を使えるように法改正がされ、現在に至ります。

5GHz帯は

  • 5.2GHz(W52):屋内利用のみ
  • 5.3GHz(W53):屋外も可能、要DFS
  • 5.6GHz(W56):屋外も可能、要DFS

と様々な周波数帯が利用でき、11aと比較して企業内無線LANのチャンネル設計が容易になりました。
しかし、W53とW54は気象レーダー等とバッティングする場合がありますので、それをAPにて検知した場合にはそのチャンネルの停止を自動で行う仕組みが必須となります。
どの周波数帯にしても一長一短がありなかなか悩ましいものです。

IEEE802.11g(Wi-fi 3)

IEEE802.11bは11aと比較して最大速度が遅く、時が経つにつれ不満が多くなってきました。
そこで11aの技術を2.4GHzにも利用することになりIEEE802.11gが策定されました。これにより11aと同じ最大54Mbpsを2.4GHzでも使えることになったのです。この第3世代の規格もWifi Allianceでは正式にはナンバリングされていません。

  • 規格策定時期:2003年
  • 周波数帯:2.4GHz
  • 最大速度:54Mbps
  • チャンネル幅:20MHz

IEEE802.11n(Wi-fi 4)

ここから大きく無線LANのパフォーマンスが向上しました。
チャネル帯域幅がこれまでの20MHzからそれを2つ束ねるチャネルボンディング機能で40MHzを実現することが可能になりました。
また、空間ストリーム(SS:Spatial Stream)やMIMOの技術も採用され、今でもAPのカタログスペックで書かれている「4x4:4」等が実現されました。
これは「送信アンテナ数 x 受信アンテナ数 : 空間ストリーム数」を意味しており、複数のアンテナとさらに同時に送れるストリーム数が増えることで結果としてAPとしての最大転送能力が挙げられたということになります。
この第4世代も正式にはナンバリングされていません。

  • 規格策定時期:2009年
  • 周波数帯:2.4 / 5GHz
  • 最大速度:600Mbps
  • チャンネル幅:20 / 40MHz
  • 空間ストリーム:4

IEEE802.11ac(Wi-fi 5)

ここからとうとう正式にWi-fiのナンバリングが行われます。正確にはWi-fiのナンバリングは後付けでつけられました。2022年現在まだまだ現役の規格であるためだと思われます。
このIEEE802.11acは全世代の11nを進化させた規格となり、チャネルボンディングを最大160MHz(8つのチャンネルを束ねる)にし、空間ストリームを最大8までとしました。
これにより、カタログスペックとしては初のGigabitクラスとなり、6.93GHzとなったのです。
またDownlink(下り)方向のみですが、Multi User MIMOが実装されました。これまでの無線LANにおいてはいわゆるShared HUBと同じ感じで、誰かがお話しをしている間は他は話ができない状態でしたが、これからはSwitching HUBのように複数人でお話しができるようになりました。
あと、細かくいえばこのIEEE802.11acはWave1とWave2とで2段階のリリースが行われました。
また、注意しなくてはいけないのはこのIEEE802.11acは2.4GHzには対応しておらず、5GHzのみなっているところです。

  • 規格策定時期:2014年
  • 周波数帯:5GHz
  • 最大速度:6.93Gbps
  • チャンネル幅:20 / 40 / 80 / 80+80 / 160MHz
  • 空間ストリーム:8

IEEE802.11ax(Wi-fi 6)

最早、IEEE802.11axという規格名はメジャーではなくWi-fi 6の方が市民権を得てしまった感じです。
このWi-fi 6においてはIEEE802.11ac(ややこしい。。)から大幅に技術改善が行われ10Gbpsクラスまでスループットを実現することが可能となりました。
技術的な解説は時間があれば別途別の記事で行いたい思います。
また、IEEE802.11acでは実現できなかった2.4GHzのサポートの復活も行われています。
そして、2022年(日本)に新たに6GHzの新チャンネルのサポートも行えるようになり、それをWi-fi 6Eとしてナンバリングされました。

  • 規格策定時期:2019年
  • 周波数帯:2.4 / 5GHz
  • 最大速度:9.6Gbps
  • チャンネル幅:20 / 40 / 80 / 80+80 / 160MHz
  • 空間ストリーム:8

Gigabitを大きく超える最大スループットとなることから、それを実現するためにはこれまでの1000BASE-TのインターフェースからmGigをサポートしたAPが多く販売されるようになってきました。

 

まとめ

無線LANの企画はIEEE802.11bの時代とは比較にならない位進化しており、今や家庭やオフィスでは欠かすことのできないテクノロジーとなっています。
2022年11月の時点ではやっとWi-fi 6EのAPがで始めると言ったタイミングですが、次にWi-fi 7の規格も迫ってきており、また5Gとどうやって今後住み分けていくのか?という答えなき議論も繰り返されています。
今後は別の記事にてもう少し詳しく無線LANを支えるテクノロジーについてまとめられればとは思っています。

 

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