今更改めてDFSについて

かなり今更な話とはなりますが、今回は5GHzによる無線LANを設計する際に避けて通れないDFS(Dynamic Frequency Selection)についての話になります。
2023年8月の時点で無線LANとして利用できる周波数帯として2.4GHz、5GHz、6GHzの3つが存在しますが、5GHzでは気象レーダーとの干渉が発生する場合があります。
無線アクセスポイントがその気象レーダーを検知した場合、干渉しないように利用している周波数(Channel)の切り替えを動的に行う必要があります。

5GHzで利用可能な周波数について

無線LANにおける5GHz帯として以下の3つのタイプがあります。

  • W52 : 5150 - 5250MHz
  • W53 : 5250 - 5350MHz
  • W56 : 5470 - 5725MHz

これらW52、W53、W56のうちレーダーと干渉する可能性があるのはW53、W56となり5GHzで利用可能な全20チャンネルのうち16チャンネルも該当することになります。
この16チャンネルにてDFSの実装が必要となりレーダーを検知した場合に即時に電波の送信停止を行う必要があるわけです。

DFSの動作

次から実際にレーダーを検知した場合の無線APの挙動をまとめます。

1.使用中のチャンネルの電波の送信を停止

レーダーを検知した無線アクセスポイントは260msec以内に電波の送信を停止します。

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2.802.11hによりクライアントに対してチャンネル切り替えをアナウンスし接続を解除

1.により電波を勝手(?)に停波してしまってはそのAPにアソシエートしている端末は困ってしまいます。
無線APは802.11h CSA(Channel Switch Announcement)を使ってチャンネル切り替えをアナウンスします。
CSAを使っても他のAPに移行しないクライアントが存在した場合は強制的に接続を解除します。

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3.他のチャンネルに移行

APは利用可能な他のチャンネルに移行します。
DFSの影響を受けないW52へ移行した場合は即座にビーコンの送信を再開し、クライアントのアソシエーションが可能な状態になります。
一方でDFSの影響を受ける可能性のあるW53、W56のチチャンネルに移行した場合は60秒間電波の送信を行わず移行したチャンネルにおいて再度レーダーを検知しないか確認します。
問題なければ電波の送信を開始します。

4.元のチャンネルへの切り戻し

DFSにより他のチャンネルへ移行してしまったAPは一定期間が過ぎると元のチャンネルが再び利用可能か確認を行います。
APにクライアントがアソシエートしていない場合、元のチャンネルに戻り「3.」と同様に60秒間電波を停止しレーダーを検知しないか確認を行います。

主流は6GHzへ?

無線LANの歴史として2.4GHzから利用が開始となりました。
この2.4GHzの周波数帯はBluetoothや電子レンジをはじめ多くの電子機器が利用しておりデータ通信を行う上で綺麗な電波ではありませんでした。
802.11aの規格とともに5GHzの利用が開始となりましたが、W53、W56においてはレーダーとの干渉があり、また屋外での利用も限定的であるため高密度AP設計ではこれはこれで頭を悩ませる原因となっています。
2023年からはWi-Fi6Eとともに新たな6GHzの利用が開始となりました。
この6GHzに関しては上記のような干渉は存在せず、また利用可能なチャンネルは多く確保されていますので今後主流になっていくと考えています。

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